【鍵盤屋さんと話してて昔の事を思い出した。】

25年ほど前、とある自称キーボディストとバンドを組むことに成った。
彼は元々はピアノ奏者という事で、音楽学校で楽典やピアノについて学んでいたらしい。ま、ハッキリ言えばクラシックのピアノ奏者なわけだ。
クラシックピアノの世界で彼がどの程度通用するのかは知らないが、とにかく知人に紹介されてバンドのキーボディストとしてやって来た訳だ。

取り敢えずスタジオで音を出してみたが、正直使えなかった。
音が途切れ途切れなのだ。
つまり、鍵盤を押下した瞬間に鍵盤から手を離してしまうので、オルガンだと音符が全部ぶつ切り。
ピアノ奏者にありがちなクセらしいのだが、理由は兎も角音が出てない時点で使えない。

その事を話すと彼は憤慨したようで、彼は「キヤさんは鍵盤を交えたバンドを演ったことがないから、鍵盤を知らないのだ。」と言い切った。
まぁ確かにその時、鍵盤を交えて正式にバンドを組んだことは初めてだったが、それ以前に高校時代から何度も鍵盤と共にバンドは演ってる。
なので、鍵盤を知らない訳じゃなかったが、彼にはオレが鍵盤を知らない横柄な態度のオッサンに見えたのだろう。

スタジオが終わり、打ち合わせ程度に話し合いをする訳だが、オレはこの音切れキーボディストと上手く演っていく自信がなかった。
取り敢えず、一緒のバンドで活動するにあたり、彼がどの程度弾けるのか知りたかった。
で、「どのくらい弾けるのか?」という質問に対して、彼は更に憤慨したようだった。バカにされたと思ったのだろうか?とにかく友好的な態度ではなかった。

どんなバンドが好きか聞いてみた。
答えはドリームシアター
まぁ悪くないが、オレはあの「テクニック至上主義の日本ウケ狙いバンド」は好きじゃなかった。
※因みに同じ理由でMr.BIGも好きじゃなかった。w
キング・クリムゾンや、ピンク・フロイドやイエスなら好きだが、同じ?(じゃ無いが…)プログレッシヴ系バンドとして、ドリームシアターはオレには稚拙すぎた。
でも、彼が渡してくれたCDの中に、Another Day が入ってた。
「この曲は素敵だね。」と言うと、「キヤさんは、テクニカルなものは理解できないから、こう言うダラッとしたバラードが好きなんでしょ?」と返ってきた。
あまりといえばあまりな発言にオレは若干憤ったが、ここで暴れても仕方がないので、「そうかもしれないね…。」とサラッと流した。

正直、オレの中では89年にデビューしたばかりの若手バンドは、当時まだ音が若くて耳に馴染まなかったのは事実だ。
楽曲もテクニック品評会みたいで、既にZEPやYESあたりが既に使い古してたりもするようなメロディーを羅列してるだけの若いバンドで、60年代や70年代のバンドに有った憂いや悲しみを感じなかったからだ。
しかしそんな中でも素晴らしいバンドに成長するだろうと思われる兆候は有った。
それが「Another Day」だったのだが、彼に取っては「ダラッとしたバラード」でしか無かったらしい…。
この感性が残念で、オレとは相容れないなぁ〜と感じた最大の部分だった。
ま、程なく彼とは袖を分かつ訳だが…。

それから暫くの間、オレは鍵盤弾き、特に「クラシック上がりのピアノ奏者」の事は軽蔑し、嫌いになった。
無駄にプライドが高く、学問的な音楽を修めてない人を蔑視する態度が本当に嫌だったからだ。
そしてその傾向は、クラシックピアノ奏者に顕著だったからだ。

音楽は学問が出来る前から存在しており、学問としての音楽など、其処にある事象を統計的に並べて、音楽をやる術として理解しやすいように整理しただけであって、そこに「音楽そのもの」が存在して居る訳ではない。
言うなれば、「絵に描いた餅」だ。
オレには食えない。
形は歪でも音になって、感動出来るのが音楽であり、複雑なスケールや、難解な理論を習得する事が音楽では無いと今でも思ってる。

まぁ、今はこの偏見も大分薄くなってきたが、今でもバンドの中でプライドが高く、他の指摘を受け付けず、譜面を読めないメンバーを蔑視する鍵盤奏者の話を散見する。
しかもそういう鍵盤奏者に限って、マトモな音が出てない。
やっぱ、「無駄にプライド高いな、鍵盤奏者は…。」と今でも思う。