衝撃の音!
あの衝撃を忘れないうちに、書いておこうと思う。
去年ひょんな事で知り合った、Mr.K。(仮名)
彼は、元世界的に有名なギブソン社のギターテクニシャンだったのだ。
長年サンフランシスコでアメリカやイギリスのトッププロミュージシャンの楽器をメンテナンスしていた、本物のプロだ。
彼のセットアップするギターやベースは、そのセットアップ前の状態とは全く別物になる。
本来その楽器が持っている能力を100%引き出せるようにセットアップされる。
何をどうしているのかオレにはよくわからない。
見た目、普通にネックの調節とピッチの調整をして、ピックアップの高さを調整しているだけにしか見えない。
でも、それまでのセットアップとは確実に出る音が変わる。
濁りも、詰まりもなくなるんだ。
よく、ヘッドとかに重りつけて、サスティンやデッドポイントを解消するパーツとか見るが、そんなの必要ないくらい素晴らしい音になる。
そんな彼の紹介で、2014年2月5日、オレは中野重夫さんと会うことが出来た。
重夫さんとは、2000年にニアミスをしている。
重夫さんは当時札幌のキクヤ楽器のメッセホールでライブをやった。
その時の前座としてオレが誘われたのだが、諸事情でその前座を断ってしまった。
お陰で、オレはかれと会うことが出来ずその年を終えた。
あれから14年。
やっとチャンスが巡ってきた。
しかも札幌まで来てくれる。
そして、一緒に音まで出したのだ。
重夫さんはオレのストラトとマーシャルを使って、信じられない音を出した。
しかも、さらっと何気なく…。
ストラトは、マーシャルに直接接続した。
つまり、シールド1本の直結ってやつだ。
ティアドロップのピックを振りかざし、弦にあたった瞬間、今まで聞いたこともないような深いサウンドが響いた。
クリーンだが、十分な質量というのか、何と言うのか、まるでブラス楽器のような深い響きが、ストラトから出た。
一瞬、ディストーション等の歪系のサスティナーでも繋いでるのか?と思うほどの厚みなのだが、全くクリーンだ。
こんな音は聞いたことがない。
その時、一緒に音を出してたサックスプレイヤーのサックスの音に十分対抗できる…いや、もしかするとそれ以上の音が出ている。
CDやレコードで過去何度も「最高の音」ってやつを聞いたが、それらは全て自宅の15cm程度の安っぽいスピーカーから出る音だ。
そんなもので「生の音」が解るはずもない。
でも、今回は本物の「生の音」を聞いた。
香港で聞いた、まるでCDみたいな音がしてたポール・ギルバート以来のショックだった。
でも、そのサウンドはポールのそれと違い、ノーエフェクトの「ギターの音」だったから、オレの驚きは半端無かった。
もう、言葉にならない。
すっげー!すっげー!すっげー!とそれしか出ない。
言葉じゃもう表現出来ないほどのサウンドだった。
ストラトを置いて、今度はオレのコリーナのVを持った。
アンプはデジタルのマーシャル。
それでも、サウンドのインパクトは何も変わらず凄い。
ひとしきりセッションが終わって、重夫さんの話を聞いた。
色々と、企業秘密も教わったが、知ったからといってすぐ出来るかといえば無理だ。w
そのまま慌ただしく再開を約束し、別れを告げた。
翌日はファントムのリハ。
リハのスタジオで又試してみた。
当たり前だが、あの音は出ない。
弾き方を変えてみた。
何となくこんな感じか?って程度の音がした。
けど、それを何時迄も維持できない。
すぐ元の音に戻る。
その衝撃の日を十分検証する間もなく、リハ翌日は東京で、更にその翌日は大阪で自分のライブがあった。
ドタバタと過ぎた数日間。
運がいいのか悪いのか、折角の衝撃を堪能する間もなかった。
衝撃を堪能しすぎると挫折しそうな位凄かった。
東京でその問題のストラトを使った。
あの音が出ない。
まぁ、アンプも違うから仕方がないが、ライブハウスにあるアンプはクズだと再認識した。
弾き方も変えてみたけど、ダメだった。
それでも、今までよりは確実にいい音に成ってるのだが、あの艶と太さは出なかった。
弾き方が悪いのだろう。
折角のセットアップも猫に小判状態。
自己嫌悪に苛まれながら東京の夜は更ける…。
翌日は朝から大阪移動。
今度は、Vでメタル。
ホテルについて、Mr.Kに再度セットアップしてもらう。
Vはすこぶる調子がいい。
リハーサルでサウンドチェック。
やはり、アンプがここでもダメだ。
何故か篭もる。
札幌で聞いたあの抜けは再現されない。
やはり弾き方なのか?
ピッキングもいろいろ試したが出ない。
あの音がでないことでイライラが募るばかり。
Mr.Kには、ギターを使いこなせてないとお叱りを受ける。
確かに使いこなせてない自覚がある。
だからこそイライラする。
リハでも本番でも色々試行錯誤しながらの演奏に成ってしまった。
それでも機材のセットアップの効果は大きく、各方面から音の良さは指摘された。
「バッキングとリードで、何かエフェクト切り替えてますか?」と聞かれた。
当然、今回はエフェクターの切り替えなどしていない。
東京でも、大阪でも、手元のボリュームだけで全部コントロールした。
なので、バッキングとソロで音が違って聞こえたならそれは正解だ。
今までなら「どうだすげーだろ?」とドヤ顔になる場面だが、今回は無理だ。
もうそんなレベルじゃ満足できない。
あの音を聞いてしまったから。
フラストレーションが溜まっていく。
フラストレーション溜まり過ぎで、あの感動がものすごい過去のことに感じる。
オレは、まだ何も変わってないのに。。。。
どーする?
どーすればいい?
何をすれば音が変わる?
と自問を繰り返す毎日になった。