ミュージシャンってさ…
まー、「音楽家」と言えば聞こえがいい。
でも、日本語的な「ミュージシャン」ってのは、「音楽家」以外の意味も沢山持ってる訳ですが…。
例えば、「不良」とかね。(苦笑
この辺の言葉の持つ本来の意味以外に、暗喩するような意味が含まれてるのって日本人は得意ですよね。
「ミュージシャンは不良が多い」見たいな意識がそのまま内包されてしまって用いられるような…。
って、話はそこじゃない…(笑
ミュージシャンってどんな人?みたいなね、印象の話をしようと思ったのだ。
オレの中でミュージシャンって、映画のキャバレーに出てくるようなやつ。
キャバレーと言っても71年のアメリカ作品じゃないです。
86年角川映画の方ね。
レフトアローンが主題歌でね。
オレと同年代の三原順子が列車の脇で立ったままFUCKしてるシーンがすごくエロくみえたけど、今思うと全然エロくないんですわ。(w
60年代の東映ハードボイルド路線的な佇まいの映画で好き嫌いは分かれるが、そこで描かれている「ミュージシャン」がオレにとっての「ミュージシャン」なんですよ。
悪く言えば、ただの社会落伍者。
よく言えば、希望にあふれる音楽家。
映画の中で尾藤イサオ演じる浅井さん(ベース@バンマス)が不始末の落とし前で小指を刎ねられるんですが、その小指の無い左手でベースを弾くので音が抜けるんですね。
その描写が場末っぽくて好きでした。
ミュージシャンの原点って本来、映画キャバレーに出てくるようなクラブバンドがスタートラインだと思うんですよ。
昔の海外のロックバンドも最初はクラブで演奏してギャラを貰うところから、キャリアをスタートさせてますしね。
現代みたいにアマチュアバンドがスタートラインではなかったんですよね…。
日本ではそもそもそういった土壌が無かったので、60年代に海外のマネでクラブバンドから登竜ってのもあったんですが、すぐに無くなって、今、生バンドが演奏してるクラブなんてあるんですかね?って状態。
ヤクザが仕切るキャバレーで演奏するジャズバンド。
ギャラなんか安いですよ。(w 場末なんですから。
3流のミュージシャン(つまりメジャーじゃないって意味ですね)との競演。
そこで生活をしてどっぷりと裏の世界にハマる感じ。
友人にもプロミュージシャンは沢山居ます。
その殆どが有名な芸能人の後ろでひっそりと演奏してます。
メディアにも沢山載ってるんですが、おそらく殆どの人は、彼らの顔も名前も知らないでしょうね。
けど、有能なんですよ。
彼らのプライベートも、正直裕福じゃないし、色々ドロドロした世界で生きてます。
映画キャバレーの世界を彷彿とさせますよ。
ミュージシャンってそういうものなんじゃないかと、最近思うんですね。
オレ自身、若い頃この映画キャバレーの世界に憧れて、ヤクザが経営するバーで演奏してましたよ。
店長、ひし形の金バッチを持ってましたね。
オレはその店長に可愛がられて、暫くそこの店でギター弾いてました。
数ヵ月後に、色々考えて足洗いましたが。
でも、その数ヶ月の間にかなり色々ありましたよ。
裏の世界ってんですかね…それこそ映画みたいでした。
普段は一般の飲み客に混じって、ペテン師やらスケコマシ、金持ちのババァに、それに群がるヒモ候補の男たちなんかが来るんですが、偶に、数百万はしそうな和服に身を包んだ姉さんと、某大手広域暴力団の組長やらが飲みに来るわけです。
そう言う日は貸切なんですね。
一般客は一切入れない。
その親分と姉さんと子分が数十人だけという感じ。
バンドは「完全受注」。w
注文されて出来ない曲があるとかなり空気ヤバイ。
なので、へたくそでも何でも無理やり演奏ですよ。
さすがに、当時23~4歳だった若造のオレに直接何かを言ってくる訳じゃないですから、映画みたいに指が飛ぶなんて事はありませんでしたが、バンマスはかなり厳しかったと思います。
「キーヤン(当時のオレのあだ名)、頼むから出来ないって言わないでくれ。本気で命に関わるから…。」って真顔で言われました。
つまり、出来なくても出来るふりして、何でも良いからコード鳴らせと言うわけです。
必死でしたねぇ…(w
組員たちは短刀ちらつかせて、「(演奏)出来ねーと明日から商売できなくなるぞ~」と薄ら笑いで脅してきます。
でも組長は意外と良い人(?)で、へたくそなオレを席に呼んでくれてジュース飲ませてくれました。
で、なんでこの世界に入ってきたのかとか、将来はどう考えているのかとか、色々聞かれましたね。
なんて答えたかあまりハッキリ覚えてませんが、色々夢を語ったと思います。
もう、20年以上前の話なんですがね…。
ある日、仕事の帰りに店長を家まで送ったんですよ。
とある一軒屋だったんですが…
その家には若い女の子が沢山住んでましてね、大半は家出少女なんですが…。
つまり、今で言う「デリヘル」の基地になってたんです。
で、その中の一人の女の子が他所の組のチンピラと出来ちゃって、スゲー面倒な話になりましてね。
相手の組は、バッチも出してないチンピラの仕業なので、今後の組の出入りはさせないから、そっちで好きなように処分してくれって話でまとまったらしく、そのチンピラ、スゲーかわいそうでした。
数日後、女の子もチンピラも界隈で見かけなくなりましたが、とても逃げれる感じじゃなかったんで、恐らく処分されたんでしょうね。
そう言う世界でしたよ。
その数ヵ月後に、こんなヤクザな生活じゃミュージシャンとしてダメになると思って辞めましたが、あの経験が良い意味で音に出てることは間違いないですね。
あの世界にどっぷり居た方が、オレは出世したかもなぁ~と思うときもあります。(w
ただし、ミュージシャンとしてではなく、ヤクザとしてですけどね。(w
店長に可愛がられてたし、組長にも気に入られてたし…(w
オレは映画の主人公みたいな天才ミュージシャンじゃないですが、ヤクザの店で演奏するバンドマンって立ち位置がどういうものか学びました。
また、そこがミュージシャンの本来の立ち位置であるとも確信しました。
人間ってドロドロしてて、正義だけで出来上がってるわけじゃない。
色々醜悪な部分を内包して、それらが全て絡み合って人間だと思うんですね。
その人間が奏でる音楽も、当然それらの絡み合いが内包されてしかるべきと思うんですよ。
そんなドロドロの中で、正義を求めるから美しいわけですよね。
醜悪な部分はそのままでも、それがあるから美しさが引き立つって面もあるわけです。
しかし、いわゆる作られたゲーノージンにはこの醜悪な匂いがしないんですね。
プライベートは十分醜悪なくせに。(w
なんつーか、テレビや、現代ならネット等のメディアに出てくるミュージシャンって、キレイすぎるんですよ。
良くも悪くも生活観を感じない。
なんか、プラスチックで出来た人形みたいで無機質なんですよね。
ウマく言えないが、熱いものを感じないというか…。
仮に熱くても、その熱さすら作られたお仕着せな感じで…。
で、そのお仕着せ感満載の連中に夢中になるファンとかね、なんか別世界なんですね。
当時、一緒に演奏してた先輩ミュージシャンの面々。
しがないミュージシャン家業で生活も苦しくて、日々その日暮らし。
当然名声も無く、金も無く、何も無い。
あるのは自分が使う1丁の楽器だけ。
でも、出てくる音は感動を呼び起こすすばらしい音なんですね。
そこには、彼らの人生や思いが織り込まれてスゲーインパクトのある音が出てるんですよ。
オレはそこに本物を感じますね。
見た目の派手さや、何も織り込んでない音を出してその気になってるのはミュージシャンとは言わない。
何も語らずに出した1音で、聞く人に涙を流させるのが真のミュージシャンだと思いますよ。
そう言う意味ではオレは随分とミュージシャンから遠いところに来てしまってます。(苦笑
語りすぎだもんなぁ~オレ。(笑